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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
ナッツリターン
2015年1月8日 つぶやき69
新年明けましておめでとうございます。昨年復活させましたこの“つぶやき”を以前同様ご贔屓にしていただている方もおられると聞き及んでおります。今年も毎月の更新を目指していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

昨年末、大韓航空の創業者一族の副社長の狼藉が話題になりました。ニューヨークから韓国への大韓航空のファーストクラスに陣取った副社長が接客のやり方にご立腹、滑走路に向かった飛行機を強引に搭乗口まで引き換えさせ、カスタマーサービスの責任者を飛行機から下ろしてから離陸したというのがメディアからの話ですが、その際に暴言や暴力も伴っていたことも大きく取り上げられていました。提供されたマカダミアンナッツの客への出し方がマニュアル違反と言ったことが端緒になった事件がゆえに“ナッツリターン”と呼ばれているのですが、釈迦に説法ですな。
今回は狼藉が海外であったこともあり、事態が公になったことで世論が沸騰し、韓国当局も無視できなくなったため年末には航空法違反容疑で韓国当局が逮捕したというニュースも大きく扱われていました。我々庶民とは違う次元での人生だったでしょうし、何をしても許されるとう感覚は一度味をしめると麻薬みたいなもの。もしかしたらこれまで彼女を心からいさめた人もいたかもしれませんが、かえってその人が被害をこうむっただけだったのだろう、と容易に想像できます。いわゆる裸の王様、本質的にはその北の国と同じなのでしょう。同情するわけではないですが、ある意味かわいそうという感情も無きにしもあらずです。でも、韓国庶民にとってはそんな感情すらご法度なんでしょう。今回もそうでしたし、ちょっと前の修学旅行船の逃げ出した船長もそうでしたが、容疑者をメディアの前にさらし者にするあの風景は韓国の伝統でしょうが、やはり違和感を感じざるを得ません。というと“お前まだ何を同情しとるねん”とテコンドーで一発食らうかもしれません。まあ、日本でも謝罪会見というと形式が決まっていて関係者がメディアに向かって“申し訳ありませんでした”と頭を下げるシーンが慣習で、謝る相手が違うだろうと突っ込みを入れたくなりますが、これに違和感を持つ海外の方も多いはずです。自分のところをほって置いて、他人に文句を言うのもこのあたりにしておくのがいいかもしれません。

さて、この話題は日本でも頻繁に取り上げられ、特に午後の3時あたりの各局のワイドショーには欠かせないものでした。いろいろな方がそれぞれの立場で評論されていたのですが、たまたま見たある番組でのコメントが“いかにも”と思えたので。そのコメントの主は“行列”で有名になった東大出身の本村弁護士。法律家の視点から一端滑走路まで出た飛行機を緊急時でもないのに(大韓航空の職員にとっては緊急時であったと思いますが)引き返すことが出来ない事は機長の常識、まして飛行機内では機長が最高責任者であるので、理由もなく引き返したことは機長の失態である、と断罪していました。明確なロジックですが、まあ、周りのコメンテーターは明らかに白けていましたね。でも、もしこの機長が勇気を持って法令に遵守し、そのまま戻らずに離陸していたら、この先何が機内で起こっていたかは想像に難くないでしょう。おそらく飛行機内での狼藉は公にならなかったでしょうし、この副社長が断罪されることもなかったでしょう。この機長の運命もあまり考えたくはないものですが、正しいことをしたことで自分に大いなる災難が降りかかったことでしょう。修学旅行船では船内放送をマジメに守って室内に留まった生徒が亡くなり、それを無視して外へ出た生徒が助かったことは韓国内でも衝撃を持って受け止められました。あまり正しいことに片意地を張ると時として報われないのは正しいとは思えませんが、時には“うそも方便”と悟ることも必要なのでしょう。
さて、この本村弁護士のコメントを受けて、私の頭の中は1969年に起きた学生運動の象徴的な事件である東大安田講堂の学生と機動隊の攻防に飛んでいきました。この年私は小学校の6年生、テレビの画面からみた東京大学で起こっていることを理解することはできませんでした。この影響でこの年は東大の入試が中止されたことは今となっては伝説でしょうね。もともと学生運動の端緒となったのは東大医学部の学生自治会と大学側の当時インターンと呼ばれた無給研修医制度をめぐる対立で、それが東大全学に波及したものでした。ただ、この安田講堂の占拠が機動隊により強制解除された際、東大生は前日までに”今後の闘争に備える“という名目で退去していたため、逮捕されたのは全員東大以外の学生だったことは有名な話。ロジカルな言動と現実的な行動の乖離、そんな東大生らしさを本村弁護士のコメントから十分に感じられたので、遠い昔にタイムスリップした次第です。かの池上さんがテレビで強い口調で言っておられましたが、この安田講堂の攻防戦で逮捕された学生はその後裁判等で大変な人生であったが、退去し逮捕を免れた東大生はそのままエリート街道を歩んだとのこと、やはり日本でも片意地張って生きていくのは苦労が多いかもしれません。