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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
悪質タックル
2018年6月5日 つぶやき110
 この1か月、日大アメフト部の悪質タックルの話題が連日報道されています。通信技術の発達がなければこれほど盛り上がることもなかったような気がします。もし、この一件が”悪質タックル”とだけ書かれていて、QBにタックルするところの写真だけだったら、その悪質さを充分に伝えることはできなかったと思います。ネット上に流れる映像を見て、その時間経過がわかって初めてその”悪質”という言葉の意味が理解できます。動画がパソコンやスマホで誰でも気楽に閲覧できるという環境がなければ、そんな一昔前の出来事だったら新聞記事にもなっただろうか、と思いますし、関学が強く抗議したとしても1回の謝罪で事が収まったかもしれません。収まったかも、という表現は関学側には失礼な言い方かもしれません。しかし、人は忘れる生物ですし、記憶は日々あいまいになるものですし、周囲の関心も日々薄れていきます。今回のような大きな世論のうねりにはならなかったでしょう。しかし、あの映像をみれば、そのたびに記憶に幾度となく刻まれていき、より鮮明な記憶と残っていきます。

 いまでこそ大学のアメフトは関東も関西も群雄割拠の時代ですが、その黎明期、東のリーグ戦は日大、西は関学が優勝することが既定路線で、大学日本一を決める一発勝負の甲子園ボールでどちらが勝つか、という一点のみが関心事でした。もし、関学なり、日大がリーグ戦で負けようものなら”犬が人を咬んでもニュースにならないが、人が犬を咬むとニュースになる”というレベルでした。実はそのあとに社会人NO1との日本1決定戦、ライスボールがあるのですが、当時は学生の方が勝つことに決まっていましたので、これは一種の儀式みたいなものでしたし、たいしたニュースにもなりませんでした。そんな時代に私は初めてこのスポーツに触れました(やっていません。テレビで見て解説でルールをおおまかに覚えました。もちろん見たのは甲子園ボールです)。そのころの日大が得意としていたのが”ショットガン”という戦法でした。当時はテレビの映像がプレイに追いつけなくて、画面にボールを持っている選手が必ずしも映っているとは限らないことがあったことも多々あり、この作戦が変幻自在で華のある作戦と強く印象づけられました。そんなわけで私の中で日大のアメフトには好印象しかありませんので、今回のことはとても残念です。今回のタックルにはその裏に潜む大きな闇があることが次第に明らかになりつつあります。日本のアメフトの発展に日大が大きく貢献したことは事実ですので、その闇を取り払い、早期の復帰を期待したいと思います。でも、話は簡単ではなさそうですねえ。民間企業に不祥事が生じれば、遅かれ早かれ社長は退陣に追い込まれますが、大学で不祥事が起こっても教授や学長が辞職したということはあまりなく、なんだかんだで生き延びて、うやむやになることが多いようにみえます。こんな前例を見ていると今回も学長さんや理事長さんは”人もうわさも75日”と思いたくなるのでしょう。

 最近、相撲やレスリング等でのスポーツ界の不祥事が相次いでいます。これが中高生のスポーツクラブ離れにつながらないことを祈りたいです。中学や高校時代にクラブ活動をがんばることも人生に大きなメリットをもたらすことは以前このつぶやき92で”学力の経済学”で取り上げましたが、もう1年半がたちました。最近の医学論文にも中高時代にスポーツクラブで頑張っていると後々歳取ってから、心臓血管病になりにくいというデータが出ていました(Gero K et al. Caridovascular disease mortality in relation to physical activity during adolescence and adulthood in Japan: Does school-based sport club participation matter? Prevention Medicine 2018; 113:102-8)。前回の経済学に比べれば、より具体的に病気になりにくいという話で、さらにデータは日本で取ったものですから、より説得力もあります。そんな先まで考えてクラブ活動をする中高生がいるか、と言われれば”そうだね”としか言えませんが、いいものはいい、と改めて強調したと思うのです。