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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
ワールドカップだ
2018年7月3日 つぶやき111
 4年に一度のサッカーのお祭り、ワールドカップが終わりました。戦前の予想をいい意味で裏切ってベスト16に残ったことは日本国民として素直に喜びたいです。その歓喜をよそにタイガースが聖地でカープに3連敗、浪速っ子としては”何しとんねん”といらだつばかりです。

 そのワールドカップのポーランド戦での後半の最後の10分以上日本がビハインドにもかかわらず攻めることをあきらめ、自陣でボールをまわすことで時間稼ぎをしたことが大きな話題となっています。国内では批判的な意見と擁護する意見が見られますが、ネットから聞こえる海外のメディアはほとんどが非難です。当然のことでしょう。真剣勝負の戦いで負けているのに勝負を投げたのですから賞賛される言われはありません。結果としてベスト16にあがれたのでまだよかったですが、もし、しくじっていたらもっとすごいことになっていたに違いありません。私もこのゲームは最初から観戦していましたが、長谷部選手が交代で入り、ボール回しが始まったときは何をしているのかすぐには理解できませんでした。解説者の説明で納得、でもかなりの時間が残っていたので最初は何とも言えない違和感がありましたが、すぐにテレビのチャンネルをNHKに替えてセネガル‐コロンビア戦を見守りました。

 このことについてサッカー解説者のみならず野球等のプロスポーツに関わる人たちが意見を求められていますが、プロと言われる方々は結果がすべてですからおおむね好意的に受け止めているように思います。8年前の南アフリカのワールドカップの監督だった岡田さんはこれを擁護しつつ、自分がその立場だったらできたか?と聞かれて”できない”と答えていました。それほど監督にとっては重く、厳しい決断だったのだろうと思います。私も最初は何とも言えない違和感を持ちましたが、時間がたつにつれ西野監督の覚悟がわかってきたように思いました。結果が良くても非難されるし、悪かったらもっと非難される、褒められることはまずない。でも、これに従った選手に非難が行くことはない。この決断は監督がすべてを背負うというメッセージであったと思いました。昨今のとある業界の方々は”秘書が‐‐‐‐‐”とか”妻が‐‐‐‐‐‐”とかの言い訳が常套手段化していますが、これらと比較するのも失礼な話かもしれませんが、西野監督の覚悟には”総大将の器”を感じさせるものでしたし、もしかしたら彼はとても非常識な方なのか、という疑念も同時にいだきました。

 この評価はおそらく10年後とか20年後とかに検証されることになるくらい日本のサッカー史に残る出来事になると思えます。”ドーハの悲劇””ジョホールバルの歓喜”と並んで”ヴォルゴグラードの忍耐”または”ヴォルゴグラードの決意”なんて言葉が並ぶことも将来あるかもしれません。

 さて、ここまでは6月30日に書きました。いよいよ決勝トーナメントです。残りはベルギー戦を見て書いています。本当に惜しい試合でした。ベルギー戦は日本がベスト16に残るにふさわしいか否か、そして、あの”10分間のパス回し”が妥当であったかどうかの評価が問われる試合でした。ランキングでは負けて妥当な試合ですが、”勝てる”と後半20分くらいまでは皆思っていたはずです。さすがにラインキング3位は伊達じゃないと感じさせるベルギーの底力を見せつけられました。でも、十分にベスト16にふさわしい内容であったと思いますし、例のパス回しの汚名を少しは晴れらしたのかな、と思います。サッカー協会はこの4試合の検証をして、4年後へのプランを立てるはずです。そして4年後、まだ私が生きているかどうか、という心配もないわけではないですが、期待をしたいと思います。選手やそれを支えたスタッフ諸氏の頑張りに拍手です。誰の言葉であったかは定かではありませんが、”サッカーはルールのある戦争である”とどこかの本で見かけました。その言葉の意味、今回は深く心にしみた次第です。