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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
スポーツとけが
2018年12月4日 つぶやき116
 平成最後の大相撲九州場所で貴景勝が優勝しました。貴乃花部屋が消滅して直後だけに大きなインパクトがありました。私は千秋楽の高安―御嶽海は見ていました。本調子でない御嶽海相手では優勝決定戦だろうな、と思っていましたが、あの日の御嶽海は前日とは別人でした。逆転のすくい投げで高安が敗れた時、解説の北の富士さんが思わず”焦って行ったらだめじゃん”と叫ばれていました。北の富士さんも本音は決定戦を期待されていたのでしょうか、それとも稽古場で力を温存する御嶽海が嫌いなのかもしれません。素人目には御嶽海の巻き替えに高安が反応してセオリー通り前に出たように見えましたので、結果は伴わなかったですが、いつもの解説者の言い分とは違うなあ、と思いました。向こう正面の舞の海さんも同じ感想を述べられていましたので、私の理解が足りなかったのかもしれませんが、なんか”後出しじゃんけん”みたいな解説で、実はまだちょっと”もやっ”としています。土俵にころがった時の高安の表情がドアップでテレビに映し出されていましたが、なんともいえない哀愁があり、優勝は逃したものの、このお相撲さん、いいやつだなあ、と好感度はアップしたのではないでしょうか。

 そのなかで横綱、稀勢の里の不振は大いに気になるところです。横綱にあがる前の彼の相撲はできていないのは明白で、あの怪我が尾を引いていることは明らかです。スポーツにケガはつきものですが、それが重症だと選手生命をも失わせてしまうことは珍しくありません。稀勢の里はやっとのことで生まれた日本人横綱ですから、その期待とプレッシャーは相当でしょうし、それが故にけがの完治を待たずに強行出場したことが悪循環を生んだ事は今さら言っても仕方ないですが、やはり返す返す残念です。一方、テニスの錦織選手はけがを治すことを最優先にツアーから一時完全撤退しましたが、結果は皆様のご存知の通り、完全復活を果たしました。両者の対照的な明暗をみるにつけ、当たりまえのことですが、けがは完全に治すとなると難しいですが、あせらず、ほぼ完全に治してからの方がいい結果になる、という当然と言えば当然の結論に至ります。その点では白鵬は上手だと感心します。けがをしたら無理をしないし、完全とは言わないまでも自分の相撲がとれるまで休場します。おそらく彼の頭の中にある優先順位の第1位はいかに長く現役を続けるか、でしょうし、それなりに出場した場所では結果は出しているのだからたいしたものです。また、同じモンゴル出身の鶴竜も白鵬といういい見本があるからでしょうか、休み方は上手だと思います。日本人は”横綱の責任”という言葉が好きで、強行出場の横綱をたたえます。かって平成の名横綱と呼ばれた貴乃花がけがのなか強行出場して優勝、時の小泉首相の”痛みに耐えてよく頑張った。感動した”の名文句を生みましたが、結局復活はなりませんでした。前例があるのにそれが生かせない、根拠ない精神論が台頭するのはいかにも日本人らしいといえばそうかもしれません。

 数年前ですが、当時タイガースの正捕手だった城島選手が膝のけがでシーズンオフに手術、スポーツ各紙は開幕絶望と書き立てました。それでも彼は開幕に戻って来てくれて虎ファンにとっては吉報であったのですが、その時の某関西スポーツ紙は驚異の回復力と賞賛、本来ならもっと長期のリハビリが必要なのに、短期間で回復したと書かれていました。いやいや、医者の目からすれば、専門ではないにしろ、それはちょっと大丈夫、膝ってそんなに甘いもんやないで、と思いたくもなりました。案の定ですが(後出しじゃんけんと言われるかもしれませんが)、彼が正捕手に戻ることはありませんでした。無理せんと、オールスター前にでも出てくれたら良かったのになあ、次の捕手が育つまで城島には頑張ってほしかったなあ、と思います。いい捕手がいないと優勝できないのはデータから明らかなのですよねえ。関西スポーツ紙がタイガースの選手をおだてるような扱いが選手をダメにすると監督を務めた野村さんが散々ぼやいていたのが懐かしいです。その名捕手と言われた野村さんは城島のリードにはかなりの苦言を呈せれていますが、彼の肩の強さは一流だと私は思っています。ソフトバンクの甲斐キャノンが日本シリーズを席巻しましたが、盗塁を許さない捕手って魅力的ですからね。

 けがと言えば、今シーズン海を渡った大谷選手のこと。まだまだ若いし、才能も半端ないので無理せず、しっかり治るまでその雄姿をまちたいと思います。治るまでという点では日本にいるより向こうにいる方が雑音も少なくていいかもしれません。向こうは過去のデータを重視し、妙な精神論はありません。野球ファンにとって一流の二刀流は見ていて楽しいですしね。