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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
世代交代
2019年1月7日 つぶやき117
 新年おめでとうございます。私がこの病院に赴任してきて5回目のお正月です。月並みですが、やはり早いものだと思います。新年の風物詩の箱根で優勝は固いとされていた青山学院が東海大に優勝を譲るという、いわば番狂わせ。勝負事はやってみなければわからない、後出しジャンケンですが、皆さん同じ思いではないでしょうか。

 年末には恒例ですが、さまざまなスポーツの日本一決定戦が目白押しです。なかでも女子フィギュアスケートはなかなかに見ごたえがありました。第一人者の宮原選手と生きのいい若手との一発勝負は最後にドラマが待っていました。フィギュアスケートの採点は技術点と芸術点で構成されることはよく知られています。技術点に優る若手と芸術性では追随を許さない宮原選手、これほど際立った勝負はなかったように思えるのです。当たり前のことですが、フィギアスケートは音楽に合わせての演技です。でも、スケートと音楽がピッタリ合っていると感じたことはどれだけあったか、実際は演技がいつも若干音楽に遅れていると感じることがほとんどでした。しかし、宮原選手の演技はむしろ音楽をリードするかのような演技でした。なかなかいい例えがないのですが、宮原選手の演技がオーケストラの指揮者のように音楽を引っ張っている、そんな印象でした。確かに彼女のジャンプは高さや距離では若手にはかなり見劣りがしましたので、技術的には今ひとつ、でも、それに優る音楽とシンクロナイズされた演技はまさに芸術品で、私は正直、紀平選手より上に来たんではないか、と思えました。今のフィギアスケート界は日本のみならず、ロシアでも若手の台頭が凄まじく、トリプルアクセルから4回転の時代になった感があります。ベテランの宮原選手には技術的には厳しいものがありますが、彼女の持つ芸術性がこの世代交代に待ったをかけられるのか、フィギュアスケートの面白さ、奥深さを垣間見た思いがしました。

 スポーツ界ではないですが、年末にもうひとつ、大きな世代交代がありました。一昨年、昨年と藤井聡太さんが席巻した将棋界の話です。長く将棋界に君臨した羽生さんが最後に保持していたタイトルである竜王戦で、挑戦者の広瀬八段にフルセット(4対3)で敗れました。かつては将棋界の7大タイトルを独占していたこともあり、まさに天才棋士であった羽生さんをもってしてもこの日が来たことは一つの時代の終焉というありきたりの言葉ですが、深く印象に残りました。以前の羽生さんの将棋は粘っこくて、少々悪くても、簡単に土俵を割らないし、いつの間にか羽生さんの勝ちになっている、そんな将棋でしたが、最近の彼の将棋は淡白になってしまったように感じます。それはかつての大棋士と呼ばれた人が通った道でもあるのですが、羽生さんでも寄る年波という言葉があてはまってしまったこと、やはりなにか不思議な感覚でした。この流れはもはや巻き戻しはないだろうな、と思いますが、羽生さんがもし巻き戻したら、やはり普通の人間業ではない、と思えます。昭和の時代に村田英雄さんが歌って大ヒットした”王将”の主人公、阪田三吉がそうであったように昔から将棋界は関東と関西がしのぎを削ってきた歴史があります。羽生さんの台頭以来、関東に圧されっぱなしだったのですが、今は関西に生きのいい若手が増えて、この世代交代はわたしにとっては実は愉快なのです。藤井聡太さんも名古屋ですが、関東か関西か、といえば関西が近い。高校を卒業したらおそらく大学進学か、棋士に専念するか、という岐路に立つはずですし、その時関東に行くのか、関西に来るのかも、大注目です。関西の若手がこのまま育ってくれたら、聡太君も関西に来てくれるはずとおおいに期待したいものです。

 関東としのぎを削るといえば、タイガースもなんとかしてほしいですよね。関東の方はなりふりかまわない補強ですが、実質プラスは丸選手だけでしょう。こちらもオリックスから西が来てくれて、これに沈んでいる若手が世代交代を見せてくれたら、という期待。毎年のことですがね。今のうちに楽しんでおかないと、ペナントレースが始まると期待は失望に変わるのが毎年の予定行事。それでもタイガースを応援するのが関西の流儀、誰かが、タイガースは関西の文化、と言ったそうですが、文化であれば、世代交代があっても、継続ですね。

 本年が皆さまにとっていい年でありますように。