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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
タイブレーク
2019年9月6日 つぶやき125
 プロ野球も佳境に入り、久々にジャイアンツの優勝が見えてきました。少々早いですが、優勝というとじゃあMVPは誰だろうか、という話題がセットになります。私はこのままジャイアンツが優勝したら、その最大の立役者は阪神タイガーズにおいてない、と思います。DeNAをたたきまくって広島とはほぼ5分の勝負にもかかわらず、ジャイアンツには出血大サービスですので、異論はないんじゃないでしょうか。大事な8月の東京ドーム3連戦で、無抵抗主義を貫き、そのお返しに先週は甲子園で2つお返しを頂きましたが、なんかシナリオどおり、と思えるような星勘定です。もちろんそんな裏取引はないでしょうが、暗黒時代のダメ虎でもジャイアンツにだけは牙をむいていたのに、さみしい限り。せめてクライマックスに出て、ドームでジャイアンツに下剋上してくれたらいくらかは溜飲の下がるところですが。

 夏で野球といえば甲子園ですが、今年の高校野球はドラフト上位にかかりそうな選手が地方予選に阻まれて、結局奥川君くらいしかいなかったせいでしょうか、選手の話題よりも投手の投球制限とか、タイブレークとか、高校野球の運営に関する話題の方が多かったです。今年から高校野球でもタイブレークが導入され、ネット上では支持よりも不支持の方が多いかな、という印象です。リーグ戦なら引き分けもありでしょうが、高校野球はトーナメントですので試合の”ケリ”をつけなければいけません。点数が入りやすいスポーツなら延長戦でたいがいケリがつきます。その典型例がバスケットボールだと思います。逆に点が入りにくいスポーツの代表例はサッカーでしょう。PK戦になるのはよく見られる光景です。野球もどちらかと言えば点が入りにくい部類のスポーツです。まして投手戦のロースコアのゲームなら延長戦でもなかなか決着とはいかないかもしれません。地球温暖化で夏の暑さは一昔前とは違います。どこかでケリをつける手段を用意するのは合理的だと思いますし、基本的にはタイブレーク導入には賛成です。ただ、この制度は日本にはなじみにくいルールかもしれません。”玉虫色の決着”、”なあなあ”などの言葉は日本人がよく使いますが、あえてトコトン決着はつけない非合理性を良しとする感覚を私たちは持ちあわせています。しかし、こと勝負事となるとトコトンやるのが日本流です。一定の時間を延長しても明らかな差がないと、引き分けとして再試合です。スポーツではないですが、将棋でも引き分け再試合がルールとしてあります。途中でルールを変えて決着つきやすいように別の手段を講じるのは欧米の合理的な感覚の賜物と思います。今回のタイブレークの導入を高校野球の主役である現役高校球児に意見を求めたら、おそらく反対が多数をしめるのではないでしょうか。彼らにしてみれば、トコトン決着をつけたい、という熱い思いがあると思いますし、今回の決定にその気持ちを高校野球連盟の大人達はどこまで受け入れたのか、という疑問があります。先ほど言いましたが私はタイブレーク賛成派ですが、その導入決定がなにか大人の都合のように見えてしまうのです。本来は球児らの将来を見据えた健康面での配慮であるべきものですし、それが十分伝わっていないのではないかと思えます。アマチュアスポーツ、特に高校野球はいわゆる”上から目線”が目立つ組織です。審判の判定は間違っても絶対です、抗議も基本的に受けつけない。プロ野球でもリクエスト制度ができましたし、人間の目の限界も十分周知されている現状を考えれば、変わっていってほしいなあと思います。やはり、主役は球児達で彼らの長い人生の高校というわずか3年間でしか味わえないのですから、彼らのひとつひとつのプレーを大切してやりたいものです。連盟が球児ファーストで考えてくれている、と思えるようになったら、このタイブレークもすんなり受け入れられるのではないかと思います。

 ここまでは医師という立場からのタイブレーク賛成論なのですが、高校野球ファンの一個人としてはトコトンやることで生じるドラマが無くなるのは少し残念です。あなたにとって一番の高校野球の試合は?と聞かれたら私は迷わず、昭和44年の夏の決勝、三沢‐松山商をあげます。若い人からはいつの話ですか、と言われそうですね。当時の私は小学6年生。時の三沢高校のエースは太田幸司さん、初代高校球児のアイドルと言われた方でその後、近鉄で活躍されました。現在まで東北地方の高校には優勝はないのですが、今から思えばこのときほど東北のチームが優勝に近づいたことはなかったと思います。延長戦になって先攻の松山商は太田の好投の前にチャンスらしいチャンスは作れずにいましたが、後攻の三沢に何度かサヨナラのチャンスがありました。なんでここでスクイズしないの?テレビの前で野球少年の私はなんども大きな声での独り言。夏の暑さを忘れていた瞬間でした。結局18回0-0で翌日再試合、子供のころにこんなドラマをリアルタイムで見たらたまりませんね。