受験産業は今も日本の一大産業です。最近のテレビには某予備校のカリスマ講師なる人がよく出ています。私の高校の後輩にもひとり、この道で有名な方がいます。和田秀樹さん、東大医学部を卒業した精神科医なのですが、医業より受験界でのほうが有名な方です。昨今はネットで調べればすぐわかりますが、彼が書いた受験関連の著書はとてつもなくたくさんあります。その中でも秀逸は”受験は要領”(PHP文庫)でしょう。
“勉強は基礎からコツコツとやっていったものが最後に笑う”などというと、”そうだよねえ、真面目にやるのが最後に報われるものよ”と納得されるかもしれませんが、それをあざ笑うかのような内容です。受験で成功するにはそれなりの戦略が必要で、それぞれの教科をどう攻略すべきかを説いています。確かにこの歳になってわかることですが、受験勉強といわゆる勉強は似て非なるものです。彼が書の中で述べている戦略がすべて正しいかどうかの判断を私はできませんが、自分が受験生のころはただがむしゃらに勉強していましたので、彼の教えがあればもっと高校時代を楽しめた(弱小野球部でしたが、クリーンアップを打ってました。高3の春に引退し、受験勉強に入りましたが、夏の大会をあきらめたことは今でも後悔しています)かなあ、と今さらながら思います。彼の本の中で一番衝撃的なことは”数学は暗記”という理屈です。正直、納得できません。数学は美しく解くから楽しいと思っていましたし、それにはひたすら練習しかない、と今でも思っていますが、彼の理屈を読むともしかしたらそうだったのかも、と心が揺れます。
受験勉強の終着点は当然のことながら志望校に合格することで、一番で合格しても最低ラインで合格しても扱いは同じです。一般に入学試験は競争試験と言われていますが、合格最低点を目指した資格試験ととらえることもできますし、それを目指しての戦略はあってしかるべきでしょう。大学受験の戦略本は多くの人がもっともらしく書いているし、一人では読み切れないくらいあります。それぞれに興味深い点もあるのですが、その内容の真否は神のみぞ知るところ。もう大学受験とは関係ない人間が読んだところで役に立つものでもないのですが、それを息子たちに伝授してやろう、とおせっかいなことを考えます。でも、結局無視されるのです。”おれにはオレのやり方がある。自分のペースでやらないと勉強する気がおきない。”などとほざくのです。唯一、言うことを聞いてくれたこと、それは”ドラゴン桜”という受験コメディだけは全部読んでくれました。その影響でしょうか、大学受験は難しくないと勘違いしたようで、届きそうもない志望校を設定してくれています。自分も振り返れば、受験では親の言うことは無視していましたから、今さら仕方ないことかもしれません。反抗期がまだ残っている17歳の若者に親の意見を聞かせる耳を持たすにはどうすればいいのか、何かいいマニュアルがあればご紹介いただきたいものです。