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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
今年の目標
2017年1月10日 つぶやき93
 新年おめでとうございます。この病院に赴任してもうすぐ3年になりますが、月並みですが早いものです。新年といえば今年の目標というのがあってもいいでのですが、この歳になると無事に1つ歳を重ねられたらと思うくらいで、若い時のような積極的で前向きなものは浮かびません。”それはあなただけではないですよ、この歳になるとそんなに欲張ってもねえ。”と達観・共感される同世代(ちなみに私は今年還暦です)の方々も少なくないと思っていますが、でも何か人生プラスになることならちょとあがいてみるのもいいかもしれません。

 先月にとりあげたのはどのような教育が子供の将来にいい影響を与えるかを論理的に示した本でした。この本を読んで誰しもが嘆くことですが、もっと早く知っていれば、子育てに生かせたはずと。子供が大人になってしまったらさすがに手遅れというもの。でも、まだまだ大人になってもやるべきことはありますよ、と教えてくれる論文にお目にかかれました。れっきとした医学論文で、BMJ(イギリス医師会の医学雑誌)に掲載されたものです。論文の原文タイトルがHeight,body mass index, and socioeconomic status; medelian randomization study in UK biobankと言います。研究方法など専門的な話は省きます。正直に申し上げて、研究方法は複雑で私もすべて理解できているわけではないのです。以前から身長や体重と社会経済的地位には相関関係があることはよく指摘されていました。ただ、身長や体重が原因で社会経済的地位に影響するのか、社会経済的地位が高くなっていくにつれて身長や体重に一定の影響がでるのか、つまりどちらが原因で結果なのか、がはっきりしていませんでしたし、さらには単なる偶然の産物という可能性も否定できませんでした。一方、社会経済的地位が高い人ほど病気になりにくいし、長く生きられることは周知の事実でした。そうならば、身長と体重をコントロールすることが社会経済的地位につながるかもしれないし、長生きできるかもしれないとちょっとやる気も出ます。ということで身長や体重と社会経済的地位の関係はどうとらえるべきか、は研究者の関心事でありました。この研究は英国人の成人119669人(男性:56652人、女性:63017人)を対象にして行われたものです。結論から行きますが、身長が低いこととBMI(body mass indexの略語でBMI= 体重kg ÷ (身長m)2という計算式で得られる値です)が高いことが社会経済的地位を低下させる。性別で見ると特に男性では身長が低いと社会経済的地位が低下しますし、女性ではBMIが高くなると社会経済的地位が低下する、という結果でした。BMIという指標はご存じの方も多いかもしれませんが、肥満度を示すいい指標と考えられています。肥満度を体重の絶対値で評価するのはよくありません。身長が高くなれば当然体重も増えますので、体重だけでは不十分なことは明らかでそれを補うように定められた指標です。ちなみにBMIの正常上限は25です。以前から自分の肥満度をセルフコントロールできないような人は他人をコントロールする資格に欠ける、つまりリーダーとして人の上に立たせるには問題だ、という考え方が特に欧米ではありました。この研究ではそのことが科学的に示されたわけです。ちょっと意外だったのは特に女性で社会経済的地位とBMIの関係が強かったという点です。ちょっと言い方は不適切かと思いますが、ありていに言えばデブの女性はデブの男性よりリーダーとしてはより嫌われてしまう、ということなんだと思います。身長は成人してしまうとこれを自分でコントロールするのは難しいですが、体重はまだなんとかなるので、体重をコントロールしてBMIを下げる努力がもしかしたら社会経済的地位の向上につながる可能性があるといえましょう。

 とはいえ、この研究はイギリス人を対象にした研究ですので、そのまま日本人に当てはまるかどうかはわかりません。事実、大阪大学医学部の教授と言われる先生方をみても、結構BMI高値と外見だけですぐわかる先生方がパラパラおられますね。もちろん、数の上ではBMI正常の先生方の方が多いのも事実ですので、この研究の大阪における真偽のほどは断定しかねます。

 この歳になってさしたる野望も抱くわけでもないですから、ここはこの研究結果にのって、今年の目標はBMI正常上限維持を掲げてみようかと思います。ちなみに、BMIの上限25以下に維持するための上限体重は私の場合、ほぼ79kgです。それは昨年の暮れ数回の忘年会を経てもこれよりわずかに下回っていましたが、お正月休みの中で当然のごとくこれを1kg以上上回ってしまいした。なんとか1年間、ダイエットというほどではないですが、腹八分目と運動で頑張っていきたいと思います。

 本年もこのコーナーご贔屓にしていただければとお願いいたします。