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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
さらば、京大君
2017年10月6日 つぶやき102
 タイガースの2位でのCS進出が確定しました。ファンの誰もが思う事でしょうが、CS1回戦の相手はDeNAになってくれたので広島に乗り込める可能性が高まりました。一方、タイガースの経営陣は相手よりも2位でペナントレースを終えて、甲子園主宰ゲームになってホットしているはずです。甲子園で1ゲームやると経済効果は3億円だと、あるマスコミの記事にありました。ファンとしては2連勝で勢いに乗って(救援投手をセーブして)広島とやりたいところですが、会社は勝っても負けても甲子園で3戦やって今年最後の一儲けと願っているでしょう。このあたりが阪神ファンと経営会社と永遠に埋められないギャップと言えます。

 そんなプロ野球の前向きな話題の中に残念なニュースが入ってきました。3年前のドラフト2位でロッテに入団した京大君こと、田中投手の戦力外通知です。大卒で3年ですからまだまだ若いうえにドラフト2位で獲得した戦力としては戦力外通知はちょっと早すぎるような印象があります。新人の1年目ではそれなりのファームで結果を残し、1軍デビューを果たしましたが、先発と中継ぎに3試合とも結果が残せず、その後はファーム暮らしが続いていました。マスコミの報道によりますと技術的な問題以前に精神的な側面で難しい問題に直面、いわゆる“イップス”となってしまっていたとのことでした。ロッテとしても今年の成績からすれば、来季に向かってチームを作り直す必要がありますので、彼をもう1年我慢する余裕はなかったのでしょう。そこはプロの厳しさともいえますが、まだまだ若く、京大卒というたぐいまれな頭脳を持つことを考慮して、新たな人生を少しでも早く歩んでほしいという球団の配慮とも取れないこともないと思えます。もし、彼がプロ野球に行かず、京都大学に残っていたら、おそらく博士課程の1年目にいるか、修士課程を終え大学を離れて、どこかの企業か官公庁の新人社員で働いているか。いずれにしてもまだまだやり直しがきく年齢ですから、この結果を前向きに取らえて頑張ってほしいと思います。月並みですが、人間万時塞翁が馬、という言葉を送りたいと思います。なにせ京都大学を卒業してプロ野球を経験したのは古今東西、彼一人だけですからそんな貴重な経験の持ち主はどの企業も欲しいのではないか、と思います。それもドラフト1位でね。

 これは本人しかわかりませんが、これからの青写真、京大君はどう描いているでしょうか。戦力外を知って、もうアポローチしている企業もあるかもしれませんが、私はおせっかい承知で彼には医学部に再挑戦してほしいと思っています。大学によりますが医学部には大学卒の方を3年次から編入させる学士入学というシステムがあります。この制度は普通どおり18歳の現役生と交じってセンター試験を経て入学するよりは難関だといわれていますが、面接の重きを置くところもあると聞きます。彼の持つ世界に一つだけ、まさにonly oneの経歴、どこかの大学の医学部が興味持たないかなあと思います。彼が苦しんだ”イップス“という病は明らかに精神疾患であり、いまだ未知の分野です。経験者でしかわからないこと、これはすごいmotivationだと思うのです。

 これもマスコミによる真偽はわからない話ですが、もしロッテが2位で指名しなかったとしたら、阪神は3位で手をあげていたらしいです。当時のドラフトの前評判ではドラフト2位での指名はちょっと意外でしたし、阪神も3位なら残っていると考えていたのもうなずけます。じゃ、もし、阪神に来ていたらどうなっていただろうとあらぬ妄想が駆り立てられます。少なくとも商売第一の阪神球団ならこの話題性十分な投手をそう簡単に手放すとは思えません。昨年からの阪神のファームの試合は掛布2軍監督ということもあって、大盛況であったといいます。当然これに便乗し、何月何日の鳴尾浜の試合に田中投手登板予定です、と大々的に宣伝するでしょうし、そのうち鳴尾浜では事足りず、甲子園でのファームの試合も激増したかもしれません。また、一軍にあがろうものなら、甲子園は5万人超になるかも。阪神球団の首脳部はちょっと読み違えたと今でも思っているのではないでしょうか。