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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
医学部不正入試
2018年9月4日 つぶやき113
 文部省の官僚と東京医大の贈収賄から始まった事件が1人の裏口入学に留まらず、入試での裏口入学の慣例化、そして女子への得点調整と芋づる式に新たな疑念が明るみになり、未だおさまる気配はありません。警察側は過去をさかのぼって裏口入学の忖度をした受験生を把握しているとのことですが、まだ公表に至っていません。大学も独自調査中とのことですし、まだまだひと波乱ありそうな気配です。

 この不正が明るみになると、多くの医学関係者や医療関係者の芸能人から”やっぱりなあ”という声が上がっていました。斯く言う私も”後出しジャンケン”ではありますが、得点調整はやっているだろうな、と思っていた一人です。私学の医学部の入試はほぼ一律、英語や数学等の各科試験があってこれが1次試験。これに合格したものは小論文と面接の2次試験に進むことができるのです。なんでわざわざ1次、2次とわけるのかというと私学の医学部は国公立と違って入学試験日がほぼ別々です。国公立は前期、後期の2回、でも後期の募集は少なく、かなり難しいので実質前期の一発勝負です。一方、私学の医学部は曜日が重なるのはそんなに多くないので1人の受験生が多数の私立医学部を受験することが日程的には可能です。そんな事情で各医大の競争率が30倍とかいうとんでもない数字になります。そのため大学側にすれば、全員面接や小論文の採点は不可能ですので、絞ったうえで2次試験となっています。私が一番怪しいと思うのはこの小論文という試験科目で明確な採点基準が公表されていないうえに、受験生の何を見たいのか、何を試したいのか、が理解できません。与えられたテーマをもとに上手な文章が書けること、が医師の才能だとでも主張したいのかもしれませんが、それは屁理屈ですね。つまり、この試験の唯一のメリットは採点する側が主観的に採点できる、言い換えればいくらでも忖度が効くという点しかないのです。ですから、まずこの試験をやめればいいと思っています。中には”うちはちゃんと採点基準もあるし、公正公明にしていますよ、という大学があれば、当然ですが、その基準とかいうやつを見せてほしいものです。一方、面接も学科試験に比べたら採点は明確ではないですので、これも忖度の温床となりえるという意見もあるでしょうし、その意見は正しいと思います。だったら面接もいらないか?と聞かれたら私は残した方がいいと思います。医学部に入学するのは受験科目でいい点を取ることが絶対ですが、その人の人間性は試験されません。頭のいい人(受験科目ができる人)がイコールで人間的も優れている、誰も”そんなわけないよね”と言うはずですし、長くこの商売をしていると医師免許を持っている人の中には本当に”トンデモナイ人”がいることに気がつきます。それは患者さんにとってもトンデモナイ不運であり、不幸です。それを少しでも予防するためには入学試験の面接はあり、と思います。ただ、”面接にどれだけの時間をかけられるの?せいぜい10分か20分でしょう。それでなにがわかるの?”、ごもっともなご意見です。なかなか見抜けるわけはないですが、そんな短い時間で馬脚を現すような人だけでもご遠慮願えれば全くやらないよりはいいと思うのです。ですから短い時間しか取れないなら、面接で採点するのはやめるべきで、”こいつはヤバイ”と思った人(複数の試験官がヤバイと判断した人)を落とすための試験にすればいいと思います。また、もし本当に面接で人物を評価して入学させたい、と真摯に思うのならもっと長い面接時間を取って審査すべきだと思いますが、少なくも今の私立医大の入試でそれをすることは時間的に不可能に思えます。

 過去にこれだけ医学部の入試の問題点が長期にマスコミをにぎわしたことはありません。来年の1月になればまた入試はやってきますし、入学試験要項が発表されるのもそろそろではないか、と思います。その中で今年から小論文をやめます、面接はしますが採点するならその基準を示し、公正に行います、そして試験の最低合格点を公表しますし、不幸にも不合格になった方へは来年の4月以降に希望があれば、個人の成績をお知らせします、という大学が現れたら、その大学の入試には忖度はない、と思ってもいいと思います。それでも、まだ小論文にこだわるのなら”まだ何かやっているな”、と疑われても仕方ないと思うのです。でも、現実的にはきっとどこも小論文は残ると思いますよ。”赤信号、みんなで渡ればこわくない”ですよねえ。

 今回の騒動で女子に対する意図的な減点も大きな問題となりましたが、これについてはまた来月つぶやかせていただければと思います。