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副院長のつぶやき
副院長 林 行雄
子どもとスポーツ
2019年12月6日 つぶやき128
 ラグビーのワールドカップが大きな盛り上がりをみせて大成功でした。この先、日本のラグビー人口も増えるに違いないとラグビー関係者は大いに期待していることでしょう。スポーツの競技人口の増加には何かしらのビッグイベントが効果的なことは明らかで、日本ではサッカーのプロ化やワールドカップの誘致などがその典型的な成功例として証明ずみです。一方、そのインパクトが薄れる前に将来を見据えた施策が求められるのも事実と思いますのでラグビー関係者にとっては遠い将来までずっとラグビーが日本のメジャースポーツとなれるか否かの正念場が“今”かもしれません。

 来年には東京オリンピックです。最初のオリンピックは1964年、昭和39年の秋でした。私は小学校の1年生でしたのでかろうじて記憶の片隅にあります。しかし、リアルタイムに見たと覚えているのは三宅選手の重量挙げの金メダルと閉会式くらいで、東洋の魔女、男子体操、柔道無差別級や円谷選手やアベベ選手のマラソン等の後世の語り草になった競技は後ほどの録画の記憶で覚えているだけです。もっと鮮明なのは後のメキシコと次の次のミュンヘンです。私は小学生から根っからの野球少年でしたが、あの時代は誰もが野球少年だったように思えますし、他のスポーツができるような環境も整っていませんでしたので、オリンピックが契機となって当時の少年スポーツが変わることはありませんでした。今の子供たちには複数のスポーツに小学校校か就学前に触れる環境が整備されつつあるのはありがたいことだと思います。私の長男も小学校から地元のサッカークラブでお世話になり、大学までサッカーでしたし、次男は小学校からバスケでした。ただ、親としてはどちらかには野球してほしかったなあという本音はあります。

 私の通勤経路の途中にちょっとしたグラウンドがあります。グラウンドと言っても長方形の広場というほうが合っているように思いますが、そこでの少年野球教室は以前からありました。2年ほど前から陸上競技の短距離のクラブが現れました。専任の複数のコーチが常にいて、計画的なトレーニングをしていますのでずいぶんと流行っています。つい最近にはバスケを教えているところしばしば出会うことがあり、素人目にもコーチの指導でバスケの基本的なトレーニングを教えているのがわかります。子供たちに最初の基本からそれなりの指導法ができるコーチがつくことは子供たちにとって望ましいことですし、勉学でもそうですが、スポーツでも子供のころから理に合った指導を受けることが将来につながることは間違いのないところです。その才能を引き出してあげ、青春時代に没頭できるものを見出せるようにすることは教育現場にもいい効果をもたらすと思えますし、ちょっとおおげさ、と非難覚悟ですが、少年犯罪の抑止力にもなるように思えるのです。

 そんなことはお前に言われんでも前からわかっていたこと、現実的にはその体制をどう作っていくかの方が厄介という意見も当然あるでしょう。厄介というのは多分にお金が絡むからだと思います。それは草の根のボランチィアに期待するのもいいですが、行政がより積極的にかかわることで発展する課題であろうと思います。ラグビーワールドカップ、オリンピックと世界的なスポーツイベントが続くことはそうそうないことですから、これを契機に将来のオリンピックで様々な競技で日本選手が表彰台にあがれる姿が見られるような施策は当然のことですが、今まであまりスポットの当たっていなかったいわゆるマイナー競技にも積極的な助成を講じていただき、子供たちに多くの選択肢が見えるようにしていただきたいものです。

 何かと結果がすぐに伴わないと行政側としてもそれなりのバックアップには踏み切れないというのが行政の本音かもしれません。スポーツではないですが、毎年秋の深まるころに世界的なイベントとしてノーベル賞の発表があります。日本人から受賞者から出るたびに決まって出る受賞者からのコメントには基礎科学への行政からの助成が少ない、このままではいずれ日本人のノーベル賞は無くなってしまう、という危機感です。目先の結果ばかりに気を取られていてはそのような将来を迎えるのは自明ですし、学問でもスポーツでも何世代先を見越した支援を期待したいです。それが結果として何の役に立たなくて終わったとしてもそれは無駄とは言わないと思えるのです。