MEとはMedical Engineerの頭文字を取った名前です。法律上の国家資格名は「臨床工学技士」と呼ばれています。残念ながら、一般の多くの方々にはME(臨床工学技士)は知られていないようです。名前から想像されるとおり、病院内のエンジニア・機械屋なのですが皆さんは病院の機械といえばどんなものを想像されるでしょう?例えば検診や人間ドックでも使用されるCTスキャンやバリウムを飲んで検査する胃透視は、馴染み深いかもしれませんがこれは「診療放射線技師」が操作しています。心電図検査・エコー検査を受けられたことがある方もおられるかもしれません。これらは「臨床検査技師」が操作しています。
ではME(臨床工学技士)は何をしているのでしょうか?臨床工学技士法では「生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」と定められています。生命維持装置とは人間の身体が生きていく為に絶対に必要な臓器・働きを代替・補助する機械の事です。生命維持の為には「呼吸」・「循環」・「代謝」が必要とされ、人工呼吸器・人工心肺・心臓補助装置(補助循環装置)・人工ペースメーカ・人工透析などが実用化されています。
ME(臨床工学技士)はこれら生命維持装置の操作・保守・管理と、さらに病院内で使用される医療治療工学機器を操作保守しています。その為、手術室・集中治療室・心臓カテーテル室などで業務をしているので一般の方には馴染みが薄いかと思われますが、病院内の工学スペシャリストとして「チーム医療」の一端を担っています。
当院は循環器を専門とする病院であることから、長い間、手術室・心臓カテーテル室での業務が中心でしたが、血液浄化業務の増加、集中治療室での業務拡大、そしてここ数年目覚しい開発が進むリズムデバイスの管理など、臨床工学技士が担う業務の職域が大きく変化していくなか、数年前より人員を大幅に増員し、あらゆる業務に対応できるよう変遷してきました。現在は研修制度スタッフ4名を合わせた計13名が臨床工学科に所属しています。(2010年9月1日現在)
人工心肺業務
心臓外科手術では手術中に一時的に心臓を止める必要があります。しかし、ただ心臓を止めただけでは色々な臓器が血液が届かなくなり臓器(心臓を含む)は壊死してしまいます。そこで、人工心肺装置を用いて心臓が止まっている間に全身に血液を送ります。大血管(大動脈)手術でも人工心肺装置を必要とする手術が多くあります。
臨床工学科では人工心肺装置の組立・充填・操作・運転・保守管理を行っています。写真の右下にあるのが人工心肺本体で、周りにあるのがそれらの制御機器・監視モニター類です。患者さんから引き出した血液をポンプ(当院では遠心ポンプというポンプを使っています)で送り出し、人工肺で酸素を加えて身体に返します。
当院心臓血管外科手術での人工心肺はすべて臨床工学科所属の臨床工学技士が運転しています。
また、人工心肺装置だけでなく外科用アブレーション装置の操作も行い、心臓手術に関わる機器すべてに携わる環境を目指しています。